手汗・ワキ汗(多汗症・たかんしょう)の治療 2025年版
手のひらや足の裏、わきの下は誰でも緊張すれば汗が出るもの。
クールに見えるネコでさえ、緊張すると足跡が着くくらい肉球に発汗するんですよ^^
でも、その程度によっては日常生活の妨げになるほどで、本人にとっては非常に深刻な問題になります。
多汗症ってご存知ですか?
多汗症には、全身の汗が増加する『全身性多汗症』と体の一部に汗が増える『局所多汗症』というものがあります。
さらにははっきりした原因のわからない原発性といわれるものと、感染症や内分泌代謝の異常、神経疾患や神経障害などの原因がある程度はっきりしているものとに分類されます。
原発性局所多汗症とは、手のひら・足の裏・わきという限局した部位から両側性に過剰な発汗を認める疾患です。最近の分類では頭部や顔面にも多汗症があるとされています。
原発性局所多汗症は、明らかな原因(ほかの病気や薬の使用)がないまま多量の汗をかく症状が6カ月以上続いていることに加えて
①最初に症状がでるのが 25 歳以下であること
②対称性に発汗がみられること
③睡眠中は発汗が止まっていること
④1 週間に 1 回以上多汗のエピソードがあること
⑤家族歴がみられること
⑥それらによって日常生活に支障をきたすこと
上記①-⑥のうち2項目以上を満たすものを診断基準として、その重症度は
1.発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない
2.発汗は我慢できるが、日常生活に時々師匠がある
3.発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある
4.発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある
の3および4は重症と判定されます。
発汗を促す交感神経が通常より興奮しやすいためともいわれていますが、まだはっきりしたことはわかっていません。
幼少期または思春期頃に発症し、手のひら・足の裏は精神的緊張で多量の発汗があり、なかには滴り落ちるほど重症の場合もあります。
本人にとっては、紙のページが破けてめくれない・人と握手や手をつなぐことができない、電気機器が壊れるので触れないなど深刻な悩みとなったりします。
最近TVでかわいいラッコ(ててっこ君と言うそうです)が手汗で悩んでお医者さんに相談するというCM(こちら久光製薬さんの みんなの手の汗サイト で見られます)がありましたよね^^
腋窩(わき)は精神的緊張や温熱刺激により左右対称性に多汗となり、下着やシャツにしみができるほどになります。
顔・頭の場合は熱いものの摂取後やストレスにより洗髪・洗顔後のような状態に汗が滴り落ちることがあり、対人関係に支障をきたし、いずれの場合も、ひどい場合は引きこもりになることさえあるようです。
手足の多汗と腋窩(わき)の多汗は合併することもあります。
また遺伝的な要素もある程度の割合で関わりがあると言われています。
約20年以上前の全国疫学調査で、原発性手掌多汗症患者さんの有病率は人口の約5.3%(足底2.8% 腋窩5.7% 頭部4.7%)と高い割合であること、そのうち医療機関にかかる割合は1割以下であることなどが明らかになりました。
世界的にも2010年以降で様々な報告がされていますが、世界中の多くの国で多汗症の有病率は少なくないわりに、医療機関への受診率が非常に低い疾患である共通点が見られます。
手足・わきの汗で悩んでいても、なかなか病院を受診しづらいというのが実情なんでしょうね・・・
治療としては以前から次の①~⑥の方法がありましたが、2023年度版のガイドラインでは両手・腋窩の多汗症には保険適応のある外用剤が登場して治療の選択肢がさらに増えました!!
①塩化アルミニウム水溶液の外用(すべての部位に適応)
塩化アルミニウム水溶液を、単純に塗布または手足の場合は塗布後にラップや手袋・袋などで密封して使用します。
汗の出口に蓋をすることで汗が出にくくなるようにしていきます。
②イオントフォレーシス(手・足に適応)
イオントフォレーシスは、多汗症の部位を水道水に浸し、それに微弱電流を流す療法です。水に非常に弱い電気を流して生じた水素イオンが汗を出す細胞に作用し、汗を作れなくします。
③ボツリヌス毒素の局所注射療法
④手術:胸腔鏡下胸部交感神経遮断術(手に保険適応)
⑤内服療法
⑥その他:精神療法・レーザー治療・神経ブロックなど
⑦抗コリン作用の外用液(腋窩・手掌は重症の場合保険適応)→(ガイドライン発表時に手掌用は未発売だったためガイドラインには未収載)
①~④・⑦はガイドラインでも効果があることを認められ、推奨されています。⑤・⑥も他で効果がない・不足する場合の治療として考えてもよいとされています。
①の塩化アルミニウム水溶液の外用は、すべての多汗症に有効かつ簡便な方法なので、まずはやってみる価値がある治療法と思われます。
②については特殊な機械が必要なため、受診前に治療が可能かどうかを皮膚科・美容皮膚科などに問い合わせてみると良いと思います。
③は治療可能な病院が限定されます。
④は治療可能な病院が、かなり限定されます。
当院では以下の①③⑦の治療に対応しています。
①塩化アルミニウム水溶液の外用(すべての部位に適応)
③ボツリヌス毒素(トキシン)の局所注射療法(腋窩・手掌に自費で対応)
⑦抗コリン作用の外用液(腋窩・手掌は重症の場合保険適応)→(2023年版ガイドラインに、手掌用は発売前だったため未収載)
また④の手術(胸腔鏡下頬部交感神経遮断術)を希望される場合は、専門病院への紹介をしておりますのでご相談ください。
ボツリヌス毒素(トキシン)局所注射療法(通称ボトックス注射)については
➡( 多汗症のボツリヌストキシン治療開始のお知らせ )を参照ください。